作者 山崎隆剣
刀匠赤坂鍔を造って三十年
華やかさはないが、そこには日本の鉄の何ともいえない深み、重厚な味わいがある。そして、眼を楽しませてくれる図柄の数々・・・私が、刀匠鍔の単純にして明快な透彫と時代を経た地鉄の美しさに魅力を感じて、その制作に取り組んだのは三十年前のことでした。
幸いにして、一流の良き先生方、熱心な先輩方にも恵まれ、地鉄の選び方、透かしや錆付けの技術など、有り難い教えを頂きました。 一言で鐔作りといっても、けっして容易ではありません。諸道具を揃えて、いざ制作に取り組んでみると、自分の思い描く作品とは程遠いものばかりでした。見た目には、単純と思われる透かし彫りも古人の作には到底及ばず、繰り返し作り直す苦心を重ねました。錆付けも同様で、気温、湿度、薬品の微妙な変化で作品が大きく変わることを経験を通して学びました。
最近は、江戸時代と同様の組織を持つ地鉄の入手が可能となり、一層制作に励みが出て参りました。今日でも“一生勉強”と思い、鍔作りに情熱を燃やしています。経験不足ですが、後世に残る作品が一枚でも完成することを目標に制作に邁進していきたいと思います。
平成元年より出店しているボロ市では、毎年当店を楽しみに来てくださるお客様とも永いお付き合いをさせて頂いております。近頃では、居合道をなさっている方々のご要望が非常に増え、平成15年春より、東京武道館などで居合道の大会にも出店しております。又、当方へ来て頂き鑑賞会も不定期で開いております。地鉄の整形、透彫、錆付け、研磨等、時間をかけ丹精込めた作品を多くの方々にご理解頂き、楽しんで頂けたらと願っております。